高専専攻科のメリット・デメリット!大学編入や就職との違いを比較

「大学編入に落ちたから専攻科に行く」はもったいない!
専攻科は単なる滑り止めではありません。「学費が国立大の半額以下」「大卒資格(学士)が取れる」「大学院進学もしやすい」という、知る人ぞ知る最強のコスパ進路です。メリット・デメリットを先輩の声とともに、徹底的に解説します。

📋 この記事の目次

  1. そもそも「専攻科」とは?
  2. 専攻科・大学編入・就職 3択の比較
  3. 専攻科の5つのメリット
  4. 専攻科の4つのデメリット・注意点
  5. 学位授与の仕組み(要注意)
  6. 専攻科から大学院へのルート
  7. 専攻科の就職実態
  8. 専攻科が向いている人・向いていない人
  9. まとめ

1. そもそも「専攻科」とは?

高専専攻科とは、高専本科(5年)を卒業後に同じ高専でさらに2年間、専門的な研究・学習を続けられる課程です。本科を「短大レベル」とするなら、専攻科は「大学レベル」に相当します。基本的な仕組みは 高専専攻科とは?大学との違いを解説 もあわせてご覧ください。

2年間
本科卒業後(20歳)から修了まで
学士(工学)
大学卒業と同等の学位を取得可能
約55万円
2年間の学費合計(国立高専の目安)
専攻科の基本的な流れ
高専本科
5年卒業
→
専攻科
入学(20歳)
→
研究・単位取得
(2年間)
→
学位授与機構
に申請
→
学士取得
(22歳)
📌 大学との大きな違い:大学は卒業すれば自動的に学士が授与されますが、専攻科は修了後に「大学改革支援・学位授与機構」への申請と審査が必要です。手間はかかりますが、合格率は高く(約90%以上)、ほぼ全員が取得できます。詳しくは「5. 学位授与の仕組み」で解説します。

2. 専攻科・大学編入・就職 3択の比較

高専卒業後の主な進路3択を横断比較します。どれが優れているというわけではなく、自分の目標によって最適解が変わります。

比較項目 専攻科 大学編入(国立) 就職
期間 2年間 2年間(3年次〜) 即キャリアスタート
学費(2年合計) 約50〜60万円 約110〜120万円 学費なし(収入あり)
学位 学士(申請必要) 学士(自動付与) 準学士のまま
環境の変化 変わらない 大きく変わる 社会に出る
研究の継続性 本科から継続可 ゼロから再スタート —
大学院進学 旧帝大院に入りやすい裏ルートあり 一般的なルート 社会人院生として可
初任給 大卒扱い(高め) 大卒扱い(高め) 準学士扱い(やや低め)
人脈・新しい出会い ほぼなし 豊富 職場で広がる
試験対策負荷 本科の成績が基準(比較的楽) 数学・英語・専門の筆記対策が必要 SPI・面接対策

3. 専攻科の5つのメリット

1

学費が圧倒的に安い

国立高専の専攻科授業料は年間約234,600円(2025年度)。2年間で約47万円です。国立大学に編入した場合の2年間(約110万円)と比べて半額以下で済みます。さらに実家から通えれば生活費も抑えられるため、奨学金を借りずに進学できる学生も少なくありません。

2

就職時に「大卒扱い」で採用される

学位授与機構で学士を取得すれば、就職時に大学卒業と同等の「大卒扱い」で採用されます。本科卒(準学士)より初任給が高く、大学卒と同じ給与テーブルに乗れます。しかも高専の「学校推薦」制度もそのまま使えるため、大手メーカーの研究職・技術職への就職が非常に有利です。

3

本科からの研究を継続・深化できる

大学編入では、3年次から新しい研究室に入り直すため、1年目は環境適応と単位取得に追われ研究どころではないという先輩の声が多数あります。専攻科なら本科の卒業研究をそのまま継続できるため、計3〜4年間の長期研究が可能。学会発表・論文投稿などの実績を作りやすく、大学院進学時にもアピールできます。

4

旧帝大・難関大の大学院への「裏ルート」になる

実はあまり知られていませんが、専攻科→旧帝大大学院(修士課程)というルートは、大学編入(学部)→大学院よりも定員が多く入りやすいと言われています。東大・京大・東工大の大学院修士課程への進学実績を持つ専攻科生も毎年存在します。「研究はしたいが学部からではなく大学院レベルで勝負したい」という人にはコスパ最強のルートです。

5

編入試験対策の負荷が少ない

多くの高専では、専攻科の入学選考が本科4年次までの成績(GPA)+面接・小論文で行われます。大学編入のように数学・英語・専門科目の長期的な筆記試験対策が基本的に不要で、5年間しっかり勉強してきた学生が素直に報われる制度です。

専攻科2年(修了後、東北大学院進学)

専攻科を選んだのは「研究を続けたかったから」です。本科の卒研で面白いテーマが見つかって、もっと深く追いたかった。学費が安かったのも正直助かりました。修了後は東北大の大学院に進みましたが、専攻科で積み重ねた研究実績が大学院の入試でかなり評価されました。

4. 専攻科の4つのデメリット・注意点

1

環境が変わらない(マンネリ・刺激不足)

専攻科最大のデメリットがこれです。7年間、同じ校舎・同じ先生・同じメンバーという環境になります。人間関係が固定化し、新しい出会いや異なる価値観に触れる機会が極端に少なくなります。「大学生活でサークルや恋愛を経験したかった」「もっと広い世界を見たかった」という後悔の声も先輩から聞かれます。

2

学位取得に手間がかかる(申請・審査が必要)

大学なら卒業すれば自動的に学士が授与されますが、専攻科は「大学改革支援・学位授与機構」への申請→小論文提出→審査→試験というプロセスが必要です。手続きは決して難しくありませんが、知らないと「修了したのに学士が取れなかった」という事態になりかねません。詳しくは次のセクションで解説します。

3

社会的知名度・認知度が低い

一般の人に「高専専攻科卒です」と言っても伝わらないケースがほとんどです。「高専卒(短大卒)」と誤解されることも。ただし就職・採用担当者レベルでは正しく理解されているため、実際の就活で不利になることはほぼありません。しかし親戚への説明や社会的な文脈での理解は得にくい場合があります。

4

研究室・指導教員の選択肢が限られる

大学編入であれば全国の大学から志望研究室を選べますが、専攻科は今いる高専の研究室の中からしか選べません。「やりたい研究が自分の高専にない」という場合は、大学編入や大学院進学を検討した方がよいでしょう。専攻科から大学院で研究室を変えるルートも一般的です。

✅ 専攻科が向くケース

  • 今の研究テーマを深めたい
  • 経済的に学費を抑えたい
  • 実家から通える環境にある
  • 大学院進学を見据えている
  • 就職より研究職・専門職を目指す

△ 専攻科が向かないケース

  • 環境を変えて成長したい
  • サークル・大学生活を経験したい
  • やりたい研究が高専にない
  • 大企業のブランド(学歴)が欲しい
  • 新しい人脈・出会いを求めている

5. 学位授与の仕組み(要注意)

専攻科修了後に学士を取るには、「独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(NIAD-QE)」への申請が必要です。知らないまま修了すると学士が取れないため、必ず把握しておきましょう。

学位授与までのステップ
専攻科
修了見込み
→
NlAD-QEに
申請書類提出
→
小論文
(総合試験)
→
審査・合否
判定
→
学士(工学)
取得🎓
項目 内容
申請時期 修了年度の秋〜冬頃(年2回)。高専の担当教員に早めに確認すること
必要書類 単位修得証明書・専攻科修了証明書・学修成果レポート(小論文)など
試験内容 「総合試験」と呼ばれる小論文形式の試験(難易度は高くない)
合格率 申請者のうち約90〜95%以上が合格(きちんと準備すれば落ちることはほぼない)
取得できる学位 学士(工学)※学科によって学士(理学)・学士(農学)など
⚠️ 注意:申請しないと学士は取れない
専攻科を「修了」するだけでは学士は自動付与されません。「修了=学士取得」ではないため、入学直後から担当教員・先輩に学位授与申請の流れを確認しておきましょう。就職活動でも「学士取得予定」として活動できるので早めの把握が重要です。

6. 専攻科から大学院へのルート

専攻科修了後の進路として、大学院(修士課程)への進学を選ぶ学生が増えています。専攻科からの大学院進学は、一般的に思われているより有利なルートが存在します。詳細は 【専攻科のススメ】高専から大学院に進学する流れ や 研究を突き詰めたい!高専から理系大学院に進む具体的なルート もご参照ください。

専攻科→大学院 進学の実態

高専専攻科修了者の55〜60%が大学院(修士課程)へ進学しています(2024年度概算)。進学先の大学院にはAI・脱炭素・バイオなど最先端の研究分野が多く、海外の学会で発表する学生も少なくありません。

大学院入試で専攻科生が有利な理由

📝 研究実績

  • 本科+専攻科で3〜4年の長期研究実績
  • 学会発表・論文があれば強力なアピール
  • 大学院の面接で差をつけやすい

📚 専門知識

  • 高専7年間の専門教育で深い基礎力
  • 院試の専門科目に対応しやすい
  • 即戦力として教授に評価される

🏛️ 定員の余裕

  • 大学院は学部より定員が多い傾向
  • 学部編入より院からの方が入りやすい大学も
  • 東大・京大院への進学実績あり
📌 専攻科→旧帝大院という「裏ルート」:旧帝大の学部に編入するのは非常に狭き門ですが、大学院(修士課程)は学部より定員が多く、外部からの受け入れも積極的です。専攻科で研究実績を積み、旧帝大の大学院に外部進学するルートは、「コスパ×最終学歴」のバランスで最強の一手になりえます。
専攻科修了→東京大学大学院工学系研究科 進学

専攻科時代に学会発表と論文を1本書いたことが、東大院の入試面接で大きく評価されました。「学部からでないと東大は無理」というイメージがありますが、大学院は別の話です。専攻科で研究実績を積んで外部院試に挑戦する方法は、もっと知られてもいいと思います。

7. 専攻科の就職実態

専攻科を修了して就職する場合(大学院に進まない場合)の就職市場での扱いを解説します。

本科卒との給与差
区分 初任給の目安 給与テーブル
高専本科卒(準学士) 月22〜24万円前後 「高卒・短大卒」テーブル適用のことが多い
専攻科修了(学士取得後) 月23〜26万円前後 「大卒」テーブル適用。院卒に近い水準の企業も
大学編入卒(学士) 月23〜26万円前後 「大卒」テーブル適用
専攻科生の就職先の傾向
  • 高専の学校推薦をそのまま使える——本科生と同じ推薦枠を利用でき、大手メーカーへの就職が有利
  • 研究職・技術開発職への就職に強い——2年間の専門研究実績がアピール材料になる
  • 専攻科修了者を「大卒以上」として扱う企業が多い——学位授与機構の学士を取得すれば大卒扱いがほぼ保証される
  • 大学院進学者が多い学校では就職情報が少ない場合も——就職する場合は早めに担任・就職担当に相談を
専攻科修了→大手電機メーカー技術職(就職組)

専攻科を出て就職しました。学位授与機構で学士を取ったので、採用は「大卒扱い」でした。研究の話を面接でしたら非常に興味を持ってもらえて、研究職として採用されました。本科卒の同期より初任給が2万円ほど高かったです。専攻科は就職でも使えます。

8. 専攻科が向いている人・向いていない人

こんな人には専攻科がおすすめ
  • 経済的に大学編入が難しい人:学費が大学の半額以下。実家通いであれば生活費も抑えられ、奨学金なしで進学できるケースも多い
  • 今の研究テーマを深く追いたい人:本科の卒研を継続できる。学会発表・論文作成まで持ち込める環境がある
  • 大学院進学を見据えている人:専攻科の研究実績を武器に旧帝大・難関大の院試に挑戦できる「裏ルート」がある
  • 就職しながら「大卒扱い」が欲しい人:学位授与機構で学士を取れば大卒と同等。本科卒より高い初任給・給与テーブルが期待できる
  • 編入試験の筆記対策が苦手な人:成績基準での選考が主流で、長期的な筆記試験対策が基本的に不要
こんな人は大学編入や就職を検討しよう
大学編入が向いている人:新しい環境・人脈で成長したい / やりたい研究が自分の高専にない / 旧帝大のブランドが欲しい / サークル・キャンパスライフを経験したい

就職が向いている人:早く稼いで経済的に自立したい / 現場で実践的なキャリアを積みたい / 大学院進学・研究職に強い関心がない / 明確に行きたい企業がある

なお、就職後に改めて大学院や編入を目指したい方は 【社会人編入・大学院という選択】高専卒業後に再進学する人の理由 もご覧ください。

9. まとめ:専攻科は「消去法」ではなく「積極的選択」

💡 この記事のポイント

① 専攻科は本科卒業後に同じ高専でさらに2年間研究する課程。学費は国立大編入の半額以下。

② 修了後に学位授与機構へ申請・審査を経て学士(大卒)を取得できる。自動付与ではないので注意。

③ 最大のメリットは①学費の安さ ②研究継続 ③大学院への「裏ルート」 ④就職時の大卒扱い。

④ 最大のデメリットは環境が変わらないこと(7年間同じ場所)。新しい出会いや刺激は少ない。

⑤ 専攻科修了者の55〜60%が大学院へ進学。旧帝大・難関大の大学院への実績もあり。

⑥ 「研究したい」「コスパで進学したい」「大学院進学を見据えている」人には積極的に選ぶ価値がある進路。

「大学編入に落ちたから専攻科」という消極的な選択ではなく、自分の目標を見据えたうえで専攻科を選ぶことが大切です。コスパ・研究・大学院進学のどれを取っても、専攻科は高専生にとって非常に優れた選択肢のひとつです。

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高専バリューでは、専攻科修了者・大学編入経験者の口コミも掲載しています。進路選択の参考にぜひ活用してください。

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